林社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士
産業カウンセラー
キャリア・コンサルタント
林 邦彦
迅速・丁寧をモットーに、お客様の労務管理に関する相談相手として、豊富な実績があります。
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横浜市旭区中白根3-20-7
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メンタルヘルスについては、会社の問題でなく個人の問題ととらえていませんか?
近年、当事務所においても、社員のメンタルヘルスについての相談を受けるようになってきました。
とはいえ、まだまだ会社でのメンタルヘルスに対する理解が浸透しているとは思えません。
貴社では、うつ病になった社員に対して「気合が足りないからだ」とか「精神がたるんでいるからだ」というような根性論で接していませんか?
このような根性論ですましていると、会社全体に問題が広がってしまい気がついた時は、社員の労働生産性が著しく低下しており手遅れになってしまいます。
つまり、メンタルヘルスは個人の問題でなく、企業の収益、生産性に直結する組織上の問題なのです。
そして、管理職の方が直接取り組まなければならない企業にとって重要な問題なのです。
メンタルヘルスが悪化している職場では、下記に記したとおりさまざまな悪影響を企業に及ぼします。
休職者・欠勤者の増加による労働日数の喪失
仕事の能率低下とミスの増加
犯罪の増加とモラールの低下
医療費の増加
自殺者や発病者に対する訴訟費用等
次に記した3つの「い」が同時に出てきて2週間以上続く場合は、要注意信号です。
眠れない
食べたくない
だるい、疲れやすい
法令や36協定に基づいた適正な労働時間管理
本人の能力や生活スタイルにあった雇用契約と評価制度の導入
職場内での気楽なコミュニケーションが可能となるよう時間確保
本人の適正や希望に沿った人材配置
キャリア開発のサポート(OJT、キャリア・カウンセリング、人事制度など)
納得感があり本人の成長につながる業績評価とフィードバック
EAPなど外部相談機関の有効活用
きちんと休養をとり、バランスのとれた食生活を心がける
マイペースでゆとりある生活を心がける
完ぺき主義にならず、がんばり過ぎない
家族や友人など相談相手を大切にする
気になることがあれば早めに専門家に相談する
趣味やスポーツ、休養など自分の時間を大切にする
人間関係管理は、労働者の人格にかかる労働意欲に視点をおいた労働者の能力をより高度に引き出すための管理です。
メンタルヘルスを語る上でも見逃すことはできません。
次に記した内容は、労務管理上重要とされている説です。
労務管理は、、F.W.テーラーによる「科学的管理法」の提唱によって「科学」として確立されました。テーラーは、労働者を経済人として位置づけ標準作業量(ノルマ)を基準に設定れた「差別制出来高払い制」の賃金により、労働者の意欲を向上しようとしましたが、この管理は、労働者を機械と同じように扱うものだという批判が高まりました。その後、ハーバード大学のメイヨーやレスリーバーガーによってアメリカのウエストン・エレクトリック社のホーソン工場で実験(「ホーソン実験」)が行われ、その結果、次のことが明らかになりました。
人間の個々の行動は、自分の属している集団の社会的慣行や周囲の状況に
影響を受け、人間は心情的に行動する。
人間の行動は、人間の基本的な欲求を満足させようとして行われる。
公式の職制組織よりも非公式(インフォーマル組織)の統制力のほうが、場合
によっては影響力が大きい。
以上の結果、生産性は、従業員のモラール(帰属意識)によって影響され、従業員のモラールは職場の人間関係によって決定されるという人間関係管理が、人事・労務管理に取り入れられるようになりました。。
ハーズバーグは、アメリカのピッツバーグでエンジニアと会計士を対象に職場満足と勤労意欲の調査をした結果、満足の反対は不満足でなく、満足の要因が欠如しても
必ずしも不満足とは結びつきませんでした。また、不満足となる要因を除去しても満足感を得られないことを明らかにしました。
ハーズバーグは、生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求の一部は「衛生」のようなもであり、それがないと不満ではあるが、それらの欲求は「やる気」になる要因(モチベーション要因)ではなく社会的欲求の一部であるとし、自我の欲求及び自己実現の欲求こそが、モチベーションの要因(「動機づけ要因」)であるとしました。
ハーズバーグの動機づけ・衛生要因
動機づけ要因 |
衛生要因 |
仕事の達成
達成についての承認
仕事内容の向上充実
責任の増大
成長及び昇進 |
政策及び管理政策
監督者のあり方
作業条件
対人関係
報酬及び身分
安定及び安全 |
リーダーシップとは、集団の中で個人の自発性と能力を生かし、目標の達成のために、互いに協力するよう人々の気持ちを動かす行動です。
リーダーには、さまざまに局面においてリーダーシップを発揮することが期待されており、そのためには、人間関係に十分な注意を払うこと大切です。
リーダーの行動の研究から、次のようなパターンに分類することができます。
独裁的リーダー |
リーダーに対する依存度が高く、個性的、独創的な行動が少ない。不平不満の潜在化、モラールの低下を引き起こしやすい。 |
自由放任型リーダー |
まとまりがなく、チームワークの悪さから、仕事の質・量の低下及び従業員の満足度の低下をまねきやすい。 |
民主型リーダー |
部下及び従業員の意見や考え方を引き出し、集団としての意思をまとめることから、従業員各々の創意、個性が集団内で活かされることにより、モラールの高揚、集団としてのまとまりもよく満足度も高い。 |
(レヴィンのリーダーシップの型より)
現代社会は複雑に絡み合った社会といってよいでしょう。その中で、働く職場も多種多様になってきており、会社の人事・評価制度も能力主義の名の下に個人の成績のみを評価する傾向にあるのではないでしょうか?
人間の最高にがんばることができる期間には、限界があります。管理職もそこしかみずに社員を評価しているのではないでしょうか?
残念ながら、多くの中小企業を訪問していえることは、いまだに遅くまで働いている社員を「がんばっている」とみている管理職が多いことです。
つまり、働きがいがある職場環境とはどういうことなのか、そして、「働きがいのある職場」こそ「企業の成長」につながるのです。このことを前述した「会社の対応」「人間関係管理」を参考に考えていただければと思います。
参考文献
「人事・総務担当者のメンタルヘルス」 鈴木安名 著 労働科学研究所出版
「ビジネスガイド」 日本法令
「職場のメンタルヘルスのすすめ方」 中央労働災害防止協会
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